夜空よぞら浮かうかつき見上げみあげたことある?あの銀色ぎんいろ表面ひょうめんに、実はじつはね、ぼくの仲間なかまやく96いま置いおいてあるんだ冗談じょうだんじゃなくて本当ほんとうはなしいまにちはそんな、ちょっとびっくりするつきのうんち事情じじょう伝えつたえるね。

この格言かくげん出典しゅってん元のもとの意味いみ

1969ねんから1972ねんにかけて、アメリカのアポロ計画けいかくで6かい人類じんるいつき降りおり立ったった。アポロ11、12、14、15、16、17ごう。みんなが知ってしってる「人類じんるい小さちいさ一歩いっぽ」のあの計画けいかくだね。

帰りかえりふね(Lunar Module の上昇段じょうしょうだん)は、つきから飛びとび立つたつときにできるだけ軽くかるくしたかった重けおもければ重いおもいほど燃料ねんりょうがいるし、月の石つきのいし地球ちきゅう持ち帰るもちかえる余裕よゆう減っへっちゃう。だから飛行士ひこうしたちは、もう使わつかわない道具どうぐ予備よび機器きき月面げつめん置いおいから帰っかえったんだ。

その中になかに使用済みしようずみ便べんふくろ(jettison bag)もあった。研究けんきゅうもの報道ほうどうのまとめでは、6かい着陸ちゃくりく合わあわせてやく96月面げつめん残さのこされたと言わいわれてる。月の石つきのいし引き換えひきかえに、ぼくたちがつき置いおいてけぼりにされたんだよ。

「えっ、汚いきたないじゃん」って思ったおもった?でもね、これがただのゴミのはなしじゃないんだ。NASAの科学者かがくしゃたちはいま、このふくろ生命せいめい限界げんかい測るはかる、ものすごく貴重きちょう天然てんねん実験じっけんとして真剣しんけん見てみてる。

うんちくん的にてきに読みよみ解くとく

月面げつめんって、地球ちきゅう常識じょうしき全くまったく通用つうようしない場所ばしょなんだ。空気くうきがない真空しんくう強烈きょうれつ紫外線しがいせん宇宙線うちゅうせんひるは120℃を超えこえよるはマイナス170℃の極端きょくたん温度差おんどさ普通ふつう生き物いきものなら一瞬いっしゅん死んじしんじゃう環境かんきょう

アポロ計画の月面ミッション3段階図解。着陸、上昇段の離脱、月の石と便袋の重量トレードオフを示す
月の石つきのいし持ち帰るもちかえるために、ぼくは置いおいてけぼり。

ところがぼくの中身なかみには、地球ちきゅう大腸菌だいちょうきん乳酸にゅうさんきんみたいな微生物びせいぶつ大量たいりょう入っはいってる。それがやく半世紀はんせいき月面げつめん真空しんくう放射線ほうしゃせんにひたすら晒ささらさ続けつづけてきた。もしその中になかに何かなにかまだ生きいきてる微生物びせいぶつがいたら…?それは「地球ちきゅう生命せいめいは、宇宙うちゅうでどこまで耐えたえられるのか」っていうちょう大問題だいもんだいの、史上初しじょうはつ実証じっしょうデータになるんだ。

NASA の Mark Lupisella たち研究けんきゅうものは、Artemis 計画けいかくつき戻るもどるタイミングで、この便べんふくろ回収かいしゅうしてサンプルとして持ち帰るもちかえることを提案ていあんしてる。生きいきてる微生物びせいぶつがいれば「地球ちきゅう生命せいめい宇宙うちゅう環境かんきょうでも生存せいぞんできる」って証明しょうめいになるし、いなくても「これだけの時間じかん完全かんぜん死ぬしぬ」って境界線きょうかいせんがわかる。

月面に置かれた便袋に強い太陽光が降り注ぐ場面と、Artemis 計画のような宇宙船が回収しに来る場面の比較イラスト
ぼくの中のなかの微生物びせいぶつが、46ねん生きいき延びのびてたら世界せかいがひっくり返るかえる

これが大事だいじ理由りゆうはもうひとつあって、惑星わくせい保護ほご(Planetary Protection)っていう考え方かんがえかたなんだ。火星かせい木星もくせい衛星えいせい探査機たんさき送るおくるとき、地球ちきゅう微生物びせいぶつ一緒にいっしょに運んはこんじゃうと、向こうむこう生命せいめい見つみつけられなくなったり、生態系せいたいけい壊しこわしちゃうかもしれない。だから「地球ちきゅう微生物びせいぶつ宇宙うちゅうでどれくらい生き残るいきのこるのか」を知ってしっておくのは、未来みらい宇宙うちゅう探査たんさ安全あんぜん設計せっけいそのものなんだ。

いまにちからできる1つのこと

ぼくって、地上ちじょうではただの「流すながすもの」かもしれない。でもつき便べんふくろはなし知るしると、ぼくの中身なかみ46ねんかん実験じっけんしつになり得るえる情報の塊じょうほうのかたまりだって気づきづくよね。

めいにちのぼくを見送るみおくるとき、ちょっとだけ想像そうぞうしてみてほしい。あの中になかには、きみ一緒にいっしょにまいにち生きいきてるなにちょうもの微生物びせいぶつがいる。地球ちきゅう重力じゅうりょく空気くうきなかだから当たり前あたりまえ流せながせるけど、宇宙うちゅう持っもっていったら世紀せいき科学かがく実験じっけんになるくらいの密度みつどなんだ。

うんちくんアプリでまいにちのぼくを記録きろくするのも、似てにてるところがあるよ。一回いっかい一回いっかい小さちいさ情報じょうほうでも、続けつづけ見るみると、きみだけのからだのリズムが浮かうか上があがってくる。つきのサンプル研究けんきゅう同じおなじで、てん集めあつめると意味いみのあるせんになるんだ。

まとめ

月面げつめん銀色ぎんいろすな上にうえには、やく96便べんふくろいま静かしずか眠っねむってる。重量制限じゅうりょうせいげん月の石つきのいし引き換えひきかえ残さのこされたぼくたちは、いま 生命せいめい限界げんかい測るはかる最ももっとも古いふるい宇宙うちゅう実験じっけんになろうとしてる。次につぎにまんつき見上げみあげたら、思い出しおもいだしてみて。あの遠いとおいぎん世界せかいに、ぼくの先輩せんぱいたちが人類じんるい最古さいこのおみやげとして、まだ宇宙うちゅうこえ聞いきいてる。